SurfLab | 2026.9.13 | 一宮町公民館

「金利のある世界」

金利・不動産・AI、そして核融合 ── 税理士が見た 2026年秋
金利が上がると、住宅ローン・不動産・株・為替・物価に何が起きるか
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今日の話

メインは金利。あとは並列で3つ

① 金利のある世界(メイン)

政策金利って何? 住宅ローン・不動産・株・為替・物価にどう連動するか。

全員

② 不動産の話 2つ

「相続税対策で不動産を買う」時代の終わり/非居住者から買うと買主が納税者になる。

不動産を持つ人・売る人

③ AIにできること・できないこと

1ヶ月使い倒しての感想。チャットだと仕事が増える、エージェントは戦力。

全員

④ おまけ:核融合

核分裂と何が違うのか。できたら世界がどう変わるか。絵1枚で。

元・物理学科より

金利が「正常」に戻る世界は、この30年間ずっとなかった。それが暮らしと商売にどう効いてくるかを、今日はみんなで考えたい。
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① 金利のある世界

そもそも「政策金利」って、何の金利?

短期金利 = 日銀が決める

  • 政策金利=銀行どうしが「一晩だけ」貸し借りする金利(無担保コール翌日物)
  • 日銀は、銀行が日銀に預けているお金(日銀当座預金)に付ける利息を上げ下げして誘導する
  • これに連動:短期プライムレート → 住宅ローンの変動金利、企業の運転資金

長期金利 = 市場が決める

  • 10年国債の利回り。日銀は直接決めない(2024年3月にコントロール終了、国債の買いも減らし中)
  • 中身=「これから10年の政策金利の予想」+「インフレ予想」+「長く貸すことの上乗せ」
  • これに連動:住宅ローンの固定金利、フラット35、社債、生命保険の予定利率
つまり:日銀が動かすのは「一晩の金利」。でも市場が「この先も上がる」と読むと、10年の金利が先に上がる。
だから固定金利は変動より先に上がる。変動は「利上げが決まってから」ゆっくり追いかける。
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① 金利のある世界 ── いま、どこにいる?(2026年9月12日時点)

31年ぶりの「金利のある世界」

1.0%
政策金利(6月決定)
9/17-18 に 1.25% へ(エコノミスト52人全員が予想)
2.98%
10年国債利回り(9/11・一時3.0%)
1月は2.35% → 8ヶ月で+0.65%
153円台
ドル円(9/11)水準はまだ円安・方向は円高
8月末160円 → 介入+利上げ観測で7円戻す
64,011円
日経平均(9/11・▲1,260円)
原油高・利上げ懸念で売り
  • 年内もう1回あるか? 市場の中心は「次は来年1月」(58%)。「12月」は35%。野村證券は 9月→1月→4月で1.75%で打ち止め、強気派は2027年末2.25%2024年3月にマイナス金利をやめてから 0 → 0.25 → 0.5 → 0.75 → 1.0 → 1.25%。今回は3ヶ月間隔=ペースが速まった
  • 理由:原油高(WTI 100ドル超)と円安で物価が上振れしそうだから。米国も8月CPIが再加速 → 来週FOMCで利上げ確率85〜90% = 日米ともに上げる → 金利差が縮まらない
  • 為替:160円が「防衛ライン」(7月末に日米協調介入)。アナリストの年内レンジは155〜170円、「大幅な円高転換は想定しにくい」が大勢
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① 金利のある世界 ── 住宅ローン

同じ「月12万円」で、買える家が小さくなる35年ローン・元利均等・月12万円返済で借りられる元本

4,620万円
金利 0.5%
(2024年まで)
4,250万円
金利 1.0%
3,920万円
金利 1.5%
(利上げが続いた先)
3,360万円
金利 2.5%
  • 理屈:返済額の中で利息の取り分が増える → 元本に回る分が減る → 借りられる上限が下がる
  • 変動金利:三菱UFJ・三井住友が基準金利を0.25%引き上げ(10月1日基準)、実際の返済額への反映は2027年1月から(5年ルール・125%ルールで急には増えない)
  • 固定金利・フラット35はすでに引き上げ済み(10年国債に連動して先に動く)
  • 「銀行トップは個人としては固定金利一択」(住信SBI社長・5月)── 損得は返済が終わって初めて分かる
実需(住む家)の買い手の予算が、1割〜2割小さくなる。それがそのまま、実需物件の価格への下押し圧力。
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① 金利のある世界 ── 全部つながっている

「安全な利回り」が上がると、他の全部の値段が下がる方向リスクフリー金利(国債)+上乗せ = それぞれの「要求利回り」

資産金利が上がると数字でいうと
不動産投資家の要求利回りが上がる。価格 = 家賃収入 ÷ 利回り なので価格は下がる方向家賃400万 ÷ 4% = 1億 → ÷ 5% = 8,000万(▲20%)
株将来の利益を今の値段に割り引く率が上がる → PER(株価÷利益)が縮む。特に「将来の成長で買われている株」に効く「AIバブル」銘柄ほど金利に弱い
為替日本の金利↑で日米の金利差が縮めば円高方向。実際、8月末160円 → 介入+利上げ観測で153円台へ。ただし米国も利上げなら差は縮まらない「日本だけ上げる」なら円高、「両方上げる」なら動かない
物価利上げは物価を抑えるためのブレーキ。円高になれば輸入品(原油・食料)も安くなる日本の物価高は「輸入インフレ」なので為替の効き目が大きい
預金・国債唯一の勝ち組。新窓販国債10年 2.7%、定期預金も上昇「置いておくだけで目減り」の30年が終わる
一言で:金利は「すべての値段の分母」。分母が大きくなると、分子(家賃・利益)が同じなら値段は下がる。
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① 金利のある世界 ── 不動産の現場は?

「売り手市場」から「買い手市場」へ?── ただし一直線には下がらない。二極化する

下押し要因

  • 実需の買い手:ローン上限が下がる(前ページ)
  • 投資家:要求利回りが上がる → 指値が下がる
  • 売り手:まだ高値の記憶 → 取引が細る → やがて価格が調整
  • 中国人など海外勢が「買い」から「売り」へ
  • 中古マンション:都心6区で直近3ヶ月の値下げ物件48.5%(6月)

支え要因

  • 建築費高騰・新築供給の激減(首都圏マンション2.3万戸=過去最低)
  • 都心タワマン最上階は6割が現金購入 = 金利に関係ない買い手
  • 賃料が上がっている(都心オフィス空室率2%以下、家賃10年で132%)→ 分子が増える
  • 外資・AIデータセンター投資(NTT・ブラックストーン兆円単位)
金利に弱い物件(ローン頼み・地方・築古・節税目的)と 金利に強い物件(現金の買い手・都心・賃料を上げられる)で二極化。「不動産は下がる/上がる」ではなく「どの不動産か」。
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② 不動産 ── 節税不動産の終わり

「相続税対策で不動産を買う」時代が終わる2026年度税制改正 ── 貸付不動産の「5年縛り」

  • 相続(贈与)の前5年以内に買った・建てた賃貸用の不動産は、路線価ではなく「時価」(買った値段ベースの8割)で相続税を計算するいまは土地=路線価(公示地価の8割)、建物=固定資産税評価(建築費の5〜6割)、さらに貸家で2〜3割引 → 一棟で買値の5割前後、タワマン・小口なら2〜3割。それが一律「買値の8割」に(貸家の減額が残るかは通達待ち)
  • 2027年1月1日以後の相続・贈与から細かいルールは国税庁の「通達」待ち。まだ出ていないが、出るのは確実視されている
  • 残るもの:小規模宅地の50%引き(ただし相続前3年以内に始めた賃貸はダメ)
  • 建築中の建物・昔から持っている土地の上の建物は経過措置あり(着工が「通達の日」に間に合うか)
ポイント:「不動産を買えば相続税が下がる」は、2026年で最後。今年中の駆け込みが増えている。
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② 不動産 ── 節税不動産の終わり ── 数字で

銀座「GINZA SIX」小口 1,000万円の例

1,000万円
買った値段
(1口)
264万円
いままでの相続税評価
(路線価+固定資産税評価)
約800〜1,000万円
改正後の評価
(「通常の取引価額」ベース)
  • 10口1億円買えば、評価2,640万円 → 相続税率50%なら約3,700万円の節税だった
  • これが「銀座のビルを買っても、ほぼ買値で評価」に変わる = 節税商品としての小口不動産は終了
  • 売る側(不動産会社)も変わる:節税訴求 → 「REITでは買えない個別物件を持てる」投資商品へ
対策は? ── 「対策」ではなく「順番」。買うなら年内・贈与も年内。ただし国税は「著しく不適当」なら個別に否認できる(総則6項)。
駆け込みで贈与するなら「否認されても納得できる金額か」で決める。心配ならやらない。
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② 不動産 ── 非居住者から買うと…

売主が中国人(非居住者)なら、買主が納税者になる「源泉徴収義務」── 踏むと代金の二重払い

1億円の物件を購入売主:中国本土に住む中国人
買主:日本人
→
正しい払い方売主に 9,000万円
税務署に 1,000万円(10.21%)
→
全額払ってしまうと2〜3年後に税務署から電話。
買主が1,000万円+加算税10%+延滞税
  • 「売主が確定申告したかどうか」は関係ない。買主の義務は消えない
  • 非居住者の判定は住民票ではなく実態(国内に住所・1年以上の居所がない人)。「住民票あるからOK」は通用しない
  • 例外:買主が個人で、自分や親族の住まい用かつ1億円以下なら源泉不要
  • いま起きていること:経営管理ビザの資本金要件 500万→3,000万円(申請96%減)、中国本土で不動産暴落を経験した人は「値上がりしたら売る」 = 中国人が買い手から売り手へ
仲介業者も顧問税理士も「アドバイスなかったじゃないか」で巻き込まれる。外国の名前が出たら、まず「居住者ですか?」
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③ AI ── 8/9「チャットAIと、AIエージェント」の1ヶ月後(感想ベース)

1ヶ月で、何が溜まったか

111→155
エージェントのメモ(件)
8/9 → 9/13
15→19
スキル=手順書(本)
8/9 → 9/13
0行
自分で書いたコード
(変わらず)
  • この1ヶ月にエージェントがやった仕事は、ほぼ既存スキル(手順書)でのルーチン回し:建設会社の月次支払 54件・6,580万円の照合/食品会社の月次 343仕訳/6月決算 4社/e-Tax送信。新しく作ったのは「銀行明細を仕訳して消し込む」窓口の発見くらい
  • 私がやったこと:日本語で頼む・確認する・判断する。それだけ
  • 1ヶ月使って分かった使い方は3つ:拡張された記憶(メモが勝手に溜まる)/拡張された作業者(登録・送信・ファイル作り)/拡張された頭脳(一緒に考える)この3つが揃ったので、「任せていい」と完全に思えるようになった。ただし、任せていい理由は自分が中身(ドメイン知識)を分かっているから
で、皆さんは? ── 8/9に「“続くもの”を1つ決めてください」と言いました。どうなりましたか。
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③ AI ── なぜ「チャットだけ」だと溜まらないのか

毎回初対面の人に電話するか、秘書を雇うか

チャットAI = 賢い人に、毎回初対面で電話

  • 毎回、最初から事情を説明する
  • 答えは賢い。でも出てきた答えを自分で書き写す(コピペ・清書・貼り付け)
  • 電話を切ったら、相手は全部忘れる
  • 結果:やれることが分かった分、タスクだけ増える。楽になったのか忙しくなったのか、分からなくなる

AIエージェント = 秘書を雇った

  • 最初は手取り足取り。でも手順書(スキル)とメモ(記憶)が残る
  • 2回目から「先月のあれ、今月分お願い」で動く
  • 答えを書き写すのではなく、成果物(登録・ファイル・送信)まで本人がやる
  • 結果:仕事が増えても、自分は忙しくならない。増えた分は秘書が働く
チャット=道具、エージェント=戦力。道具は使うたびに自分の時間を使う。戦力は使うほど育つ。
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③ AI ── 同じ「AIを使う」でも、流れが違う

「使い捨て」か「積み上げ」か

チャット質問を書く
→
答え賢い文章
→
自分の手書き写す・貼る・直す
→
残るものなし。来月もゼロから
手順書+メモ1回目に一緒に作る
→
エージェント読む・登録する・送る・ファイルを作る
→
自分確認して、判断するだけ
→
残るもの手順書が育つ。来月は「いつものやつ」
上の流れは、AIが賢くなるほど自分の作業が増える(答えが良いほど、やることが増える)。
下の流れは、AIが賢くなるほど自分の作業が減る。── 同じAI、違うのは「残るものがあるか」だけ。
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③ AI ── 孫正義さんが最近の講演(YouTube)で言っていること

AGIが来る。20年後、AIが世界のGDPの20%を取るソフトバンクは全部そこに振る ── そのときの世界を想像すると

「AIが仕事を奪うのではない。AIを使う企業が、使わない企業から仕事を奪うのです。」── 孫正義(2040年頃:AIが世界GDPの20%、AIエージェント100兆個・ロボット10億台が24時間働く世界)
「スキルはデフレ、センスはインフレ。AIは世の中に“あるもの”の集大成。“ないもの”は何かを決めるのは人間の側。」── 楠木建(経営学者)
  • 税理士も、個人事業主も、サーフショップも同じ。「使う人が、使わない人から仕事を取る」
  • 「あるもの」をまとめるのはAIが圧倒的に速い = 知識や作業スキルの価値は相対的に下がる。上がるのは「何を問うか」を決めるセンス
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③ AI ── 100兆個のエージェントがいる世界で、改めて

人間にしかできないこと

① 問いを立てる

AIは問いを与えられないと1ミリも動かない。「なぜそうなるのか」「なぜそうなっているのか」と聞くのは人間。

「もしかしてこれを求めているんじゃないか」=仮説も人間から出る。

② 仮説と検証を速く回す

仮説を立てる → AIに調べさせる・作らせる → 結果を見て次の仮説。

このサイクルが1日で何周も回せるようになった。差がつくのは回数。

③ コミュニケーション

相談される・打ち明けられる・合意を作る。「誰が言ったか」の部分はAIに置き換わらない。

ドメイン知識(現場の中身を知っていること)は相変わらず有用。だから安心して任せられる。

AIは「拡張」。記憶も作業も頭脳も拡張してくれる。でも問いと仮説は自分の中からしか出ない。
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④ おまけ ── 核融合と核分裂

原子核の「エネルギーの谷」── 底は鉄軽い側から下るのが核融合、重い側から下るのが核分裂。行き先はどちらも「鉄」

→ 原子核の重さ(質量数) ↑ 核子1個あたりのエネルギー(高い=不安定) 水素 H ヘリウム He ナトリウム Na 鉄 Fe-56 = 谷の底(いちばん安定) ウラン U 核融合(フュージョン) 軽い核どうしをくっつけて、谷を下る 核分裂(フィッション) 重い核を割って、谷を下る どちらも「谷を下った分の質量」が消えて、E = mc² のエネルギーになる
核分裂:ウランは重すぎて不安定 → 中性子をぶつけると割れる → 出た中性子が次を割る(連鎖反応)→ 一定量(臨界)を超えると勝手に加速。ゆっくり制御すれば原子力発電、一気に行かせれば原爆。
核融合:水素は軽すぎて不安定 → でも核どうしは+電気で反発するので、1億℃まで熱してぶつけないとくっつかない。太陽は重力で押さえつけてやっている。地上では水爆(原爆を点火に使う)ならできるが、穏やかに持続させるのがまだできない。
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④ おまけ ── 核融合は、いま何ができて何ができないか

「点火」はできた。「発電所」はまだ燃料は海水の重水素+リチウム。1gで石油8トン分(核分裂の約4倍、石油の800万倍)

できている

核融合を人工的に起こすこと自体は1950年代から(水爆・実験炉)。

2022年12月、米国NIFがレーザーで「入れた以上のエネルギーが出る」(点火)を初めて達成。

日本の JT-60SA(茨城・世界最大級)は2023年に運転開始。国際計画 ITER(フランス)は建設中。

できていない

穏やかに、持続的に、装置全体で黒字にすること。NIFの「点火」も、レーザーを動かす電気まで含めれば大赤字。

1億℃のプラズマを何時間も閉じ込める磁石・材料・燃料(三重水素)の製造。

主流の見立て:実証炉 2030年代、商用 2040年代。民間(米CFS・Helion、京都フュージョニアリング)は「2030年前後」と主張。

できたら何が変わるか

燃料が海水=実質無尽蔵・どの国も持てる(エネルギー安全保障が消える)。

CO2ゼロ・高レベル廃棄物なし・暴走しない(条件が崩れると勝手に止まる)。

エネルギーがほぼタダになると:海水淡水化・空気からCO2回収・合成燃料・植物工場が全部採算に乗る → 水・食糧・環境問題が「エネルギー問題」に一本化されて解ける。

孫さんの「AIが世界GDPの20%」と同じ構図。AIは頭脳のコストをゼロに近づけ、核融合はエネルギーのコストをゼロに近づける。この2つが揃う世界を、いま生きている子どもたちは見る。
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